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FILE69掲載 GARDEN TALK 『沖縄で育てやすいビザールプランツ』

手前から時計回りに上原つぐみさん、照屋清司さん、山内浩一郎さん、照屋昭さん、照屋伸幸さん。

ビカクシダやブロメリアなど多種多様な植物を育てている豊見城店の山内店長の自宅に植物好きが集結。那覇市のうれんプラザでビザールプランツの専門店を出店しているW-PLANTSの照屋兄弟や、最近、ドライガーデンにはまっているというメイクマンのスタッフ上原さんも加わり、ビザールプランツの魅力や今後流行りそうな植物のジャンルについて語りあった。

山内 今日は僕の家に集まっていただきありがとうございます。今回のfile69の特集はビザールプランツです。僕自身もビザールプランツを含め、自宅でたくさんの植物を育てて楽しんでいますが、実際に見てみてどうですか。

File67の企画で山内店長の自宅に作ったガーデン。

伸幸 いや、もう本当にすごい。僕も育てていますが、サイズが小さいうちに出荷することがほとんどなので、これだけ植物が生長した姿を見られる環境に興奮しています。もし値段が付いていたら購入して持ち帰りたいくらいです(笑)

山内 いやぁ、値段は付けられないかなぁ。

清司 ほんとに、海洋博公園の熱帯ドリームセンターにいるみたいですよね。店長がこんなに植物にのめり込んだのはなにかきっかけがあったんですか。

山内 僕が植物にはまったのは、子供の頃に遊んでいた環境にあるんです。高校卒業後にメイクマンに入って植物を担当するようになり、最初にはまったのがビカクシダでした。でも思い返すと、ビカクシダは子供の頃に出会っていたんですよね。僕の父親が洋蘭を育てるのが趣味で、家には洋蘭を育てるためのハウスがありました。僕はよくそのハウスでかくれんぼをして遊んでいたんですけど、そこで蘭に混じって変な植物があったんですよ。それが今思えば、ビカクシダでした。メイクマンに入ってからビカクシダについて興味がわいて調べていくうちに、世界中にいろいろな品種があることを知り、どんどん集めだした結果が、今こんな状態になっています(笑)

伸幸 確かにビカクシダだけでも、すごい数の品種がありますよね。最近は、ハイブリッド種と呼ばれる交配された品種も誕生しています。蘭もそうですが、育てる人が増えれば増えるほど品種も増えていくんですよね。形もより一層カッコ良くなっている気がします。あとビカクシダは、観ても良し、飾っても良し、育てても良し。インテリアグリーンとしてパワーのある植物だと思います。

山内 植物って鉢植えで飾るのが基本だけど、ワイルドなフォルムのビカクシダは空間を飾ることができるのが魅力です。僕の家には、長いもので8年くらい育てているのもあります。生長しすぎて相当重いから、水かけや移動するのが大変ですよ。

 植物は年数かけないと出せない魅力があるのでうらやましい限りです。

自宅でたくさんのビカクシダを育てている山内店長。

山内  ところで、沖縄でビザールプランツといえば今やW-PLANTSさんと言っても過言ではありませんが、みなさんが育て始めたのはいつ頃からですか。

清司 10年くらい前でしょうか。兄の伸幸がディッキアやアガベを育て始めたのが、最初だったと思います。

伸幸 きっかけは、メイクマン美浜店に納品に行ったときに見た、アガベ・ベネズエラです。それまでは、野菜や観葉植物を中心に育てていましたが、インパクトのある見た目に刺激を受け、他の品種も調べていくうちに、どんどんのめり込んでいきましたね。見た目のカッコ良さもありましたが、調べていくうちに、自生する地域の環境によって個性が生まれることを知り、一層興味がわきました。例えば、マダガスカルなど乾燥地域で自生するパキポディウムは、むっくりとした太い幹が特徴で、内部はスポンジ状になっていて、高い保水力があります。ブロメリアは雨を受けるために手を広げるようなフォルムになっています。このように自生する環境に合わせて植物たちが形を変えているのもおもしろいですよね。

そんな個性的な植物は、主に乾燥地域で自生している植物が多く、暑さに強くて沖縄の環境に適している。こんなワイルドな植物が沖縄で育てられるなら、むしろやらないことが損じゃないかと思い、生産を始めました。

ビザールプランツの生産に力を入れる長男の照屋伸幸さん。

あと、これはお金の話になりますが、例えば一般的な観葉植物を1年間育てて2,500円だとすると、アガベやデッキアなら5,000円で販売できる。利益の高いビザールプランツを広めることで、生産者のみなさんを盛り上げていきたいという思いも強かったですね。

山内 最近はビザールプランツの中でも、とくにビカクシダや塊根植物が若い人に人気がありますよね。それはなぜでしょうか。

 一番は、育て方ひとつでフォルムが大きく変わるという点ではないでしょうか。例えばパキポディウムでいえば、上手に育てれば、株がぽってり丸みを帯びて見栄えが良くなります。反対に水やりの頻度など育て方を間違えると、株が細くなり、フォルムが弱々しく見えてしまいます。ビカクシダもそうですが、今までの植物を飾るという植物の楽しみ方に加えて、育てるという要素が加わり、育成ゲームをするような感覚で流行っているんだと思います。

山内店長がコレクションしているビザールプランツ。手に持つのはオペルクリカリア パキプス。

山内 フォルムを楽しむという点でいえば、盆栽に近い感覚かもしれないね。

 盆栽は、若い人からすると、ちょっと敷居の高さを感じる傾向がありますが、ビザールプランツは縛りがなく、何をやってもいいって言ったらおかしいですけど、自分が好きなオリジナルのフォルムを追求できる点は、入りやすいかもしれませんね。

失敗を繰り返しながら、沖縄に適した育て方を探す

山内 上原さんの家にも立派なアガベがありますが、最近はどんな植物を楽しんでいるのかな。

上原 今は庭にロックガーデンを作って、サボテンやヤシなど乾燥に強い植物を育てています。ネットや雑誌などで見かけて、「あ、かっこいいな」って思ったのがきっかけです。先ほども話に出ましたが、本土では、冬の管理が大変な植物も、沖縄では育てやすいですよね。「やらないことがもったいないなぁ」と思い挑戦してみることにしました。

庭にロックガーデンを作りサボテンなど乾燥に強い植物を育てている上原つぐみさん。

上原つぐみさんが手がけたロックガーデン。アガベやユッカ、サボテンなどで構成されている。

山内 沖縄は気候が暖かく、自宅の庭でコストをかけずに育てることができるのは植物好きにとってはうれしいよね。

伸幸 そうですね。今までは本土から情報が来て、沖縄で広まっていくパターンが多かったと思いますが、今後はロックガーデンのように、沖縄で流行ったものが、本土に広がっていくこともありますよね。

山内 全然あると思いますよ。今までは育てるのが難しかった植物も、育てる人が増えたことで成功例が増えて、失敗も少なくなってきている。

伸幸 以前はまずは実践して、枯らすことで知識を蓄えていましたが、今はSNSで情報共有ができるので、確かに育てやすくなっていますね。でも、ここで気を付けて欲しいのが、沖縄での育て方です。沖縄と本土では気候が違うので、本土の出版社が発行する専門書通りに育てると失敗してしまうことがあります。僕もお客さんから「冬は植物を室内に移したほうがいいですか」といった質問を受けたりしますが、冬といっても沖縄は気温が10度を切ることはないので、屋外のほうが植物にとっては過ごしやすい。反対に夏は、暑すぎて植物にとっては負担が大きい。専門書に頼りすぎないで、沖縄の気候に合わせた育て方を見つけるのが成功の秘訣です。

山内  僕もビカクシダで失敗を経験しました。専門書を読むと、冬は水を切ると書かれていたので実践したところ枯れてしまいました。沖縄の冬は風が強いので乾燥しやすく、水は必要なんですよね。沖縄で育てる場合は専門書を参考にしつつ、失敗を積み重ねながら、気候にあった育て方を見つけないといけないよね。同じ地域で育てる人にアドバイスをもらうのが一番ですね。

 確かに、同じ沖縄でも本島北部と南部では、育て方も変わってきます。僕は高台にあるアパートに住んでいますが、風が強くて、乾燥に弱い植物は育たない。朝たっぷり水をあげたのに、仕事から帰ってくると、カピカピに乾いているので、ビカクシダは何度も失敗してしまいました。反対にパキポとかサボテンなど乾燥の強い植物は育てやすい。建物の立地であったり、ベランダや庭など育てる場所によっても違うので、植物を日々観察して対話しながら、環境に適した育て方を見つけてほしいですね。

自宅のベランダでパキポディウムなど塊根植物を育てている次男の照屋昭さん。

山内 上原さんは庭を作っているときに失敗したことはありますか。

上原 ポインセチアを植えていたんですけど、西日がよくなかったのか枯れてしまいました。

伸幸 西日を当てすぎて失敗した話はよく聞きますね。植物も人と同じで西日を当てると日焼けしてしまい弱ってしまいます。少し当てるくらいなら、幹がしまるので良い点もありますが、当てすぎは植物へのダメージが大きい。もし鉢を移動できるなら、なるべく朝日が当たる東側に置くようにしてください。

あと、庭植えの場合は土壌も確認してください。よく地層の深いところで水が溜まっていることがあります。庭木が小さいときは育ちますが、3、4年経って根が深い部分まで伸びたときに、根腐れが起きて枯れてしまうことがあります。クロキとか沖縄の庭で昔からよく見かける木は耐性があるので育ちますが、これから新しい植物を植えるときには注意が必要です。庭の水はけの状態は確認しておくのがおすすめです。

植物が枯れる原因って本当にいろいろあります。水をあげなくてもかれるし、あげすぎても枯れる。でも枯れるには必ず原因があります。それを見つけることでスキルアップにもつながるし、植物育てる楽しみでもありますよね。

山内 水やりは課題ですよね。日あたりも重要ですが、水を好む植物と好まない植物を同じ場所に植えないで、わけて植えてあげるのもコツですよね。

次に沖縄で流行る植物は、オージープランツか⁉︎

山内 ロックガーデンに植えられる植物もそうですが、乾燥に強い植物は水やりの頻度が少なく、手がかからないので人気がありますが、次に沖縄で流行りそうな植物ってなんだと思いますか。

伸幸 オーストラリアで自生しているオージープランツはおもしろいと思いますよ。オーストラリアといっても広大なので、すべての品種が沖縄の気候に合っているとは限りませんが、ユーカリ・ポポラスは向いていると思います。ユーカリーは直根性なので地植え向きだと思いますが。

山内 オージープランツはきれいな花が咲くし、ドライフラワーとしても楽しめる。花も幾何学的というか、構造が細かくてすごいよね。パキポやアガベなど葉っぱを愛でる植物が流行っているので、今度は花を楽しみたいなぁっていう人も増えてくるかもしれない。最初は情報が少ないので育てるのも難しいかもしれないけど、比較的乾燥に強く育てやすい品種も多いと思います。沖縄は雨が多くて湿度が高いのでそのあたりをどうクリアするかが課題だよね。でもトライする人が増えてきたら、沖縄の気候に合わせた育て方も分かってくるんじゃないかな。

伸幸 水が苦手なプロテアは難しいかもしれませんが、グレビレアやアカシアは沖縄でも十分育てられると思います。実際にレインボーユーカリを庭で育てている人もいます。まずは自分たちが実験をして、沖縄で育てられる品種を探して提案していきたいですね。

あと、オージープランツには柔らかい葉が特徴の涼しさを感じさせる品種もあります。ワイルドなカルフォルニア産地のビザールプランツとオージープランツを組み合わせたハイブリッドな植物を作り出すこともできるかもしれない。可能性はいろいろ広がってくると思います。

山内 どちらも乾燥に強い植物なので楽しみですね。コロナがおさまったらの話ですが、オージープランツを観にオーストラリアに行きましょう。

清司 実は僕は、フィンガーライムの農場を見学するためにオーストラリアに行ったことがあるんです。その時に、「確かレモンマートルだったと思いますが、レモンの香りがする植物があるよ」って教えてもらったのに、フィンガーライムしか見ていなかった。もっと勉強しておけばよかった(笑)

オーストラリアでの思い出を語る三男の照屋清司さん。

伸幸 オーストラリアにはアガベの有名な生産者もいるんだよね。行ってみたいな。

清司 僕はオージーもいいけど、ハワイアンプランツもおすすめしたいかな。暑い気候が苦手な植物なので沖縄で育てるのは難しいかもしれないけど、フラダンスに使われていたりと、植物にストーリー性があるのが魅力なんですよね。

伸幸 ハワイもいいよね。今はなかなか海外に行きづらい状況ですけど、海外の植物を育てていると、沖縄にいながらにして、現地とつながっているようでワクワクした気分になりますね。

山内 植物を育てるのは、原産地の気候を理解してからのスタートだからね。それを知ることが一番楽しい。

伸幸 そこがもう本当に魅力だし、現地の気候を考えながら試行錯誤しているのは楽しい時間です。あと、自生している土壌を知るのも大切。例えば岩の近くだったらアルカリ性の土壌、雨がよく降る場所だったら酸性の土壌など、そんなことも考えて育てるのがいいですね。

 僕は自生している地域をGoogleマップでめぐって、行った気分になって楽しんでいます。

伸幸 分かる。いや本当に植物が好きすぎて僕もGoogleマップでアメリカとメキシコの国境にある砂漠とかをめぐったりしていますね。

山内 楽しみ方は尽きませんね。上原さんは庭だけではなく玄関周りや室内でも植物を飾って楽しんでいますよね。

上原 そうですね。家がシンプルな作りで壁の面積が多いので、植物がないとのっぺりとした感じになってしまうんです。グリーンを置くだけで家が素敵に見えますね。

伸幸 うらやましいなぁ。僕は植物を飾って楽しむ暮らしに憧れています。もし家を建てるときは、台風の被害も受けない中庭を作って、フィロデンドロンを植えたいですね。

山内 最近は、自宅で過ごす時間も多くなり、植物を家の中で育てている人も多くなってきたよね。室内で育てるコツとかって何かあるかな。

伸幸 植物を育てる上で大切なのは光です。でも、最近流行りのアロイド系のクワズイモやモンステラなどサトイモ科の植物は、ヘゴが育つような湿地帯を好むので、日光をそこまで必要とはしません。とはいえ室内で空気がこもってしまう環境は、植物にとってはよくないので換気はしっかりしましょう。

あと、同じ場所に置き続けてしまうことも NGです。植物によっては適していない場所もあるので、ベランダに出すなど、1週間から10日に1度は、なるべく動かすようにしてください。特に人が頻繁に行かないトイレは空気がこもりやすいので気を付けてください。

山内 風は大切だよね。最近はサーキュレーターといった便利な道具もあるので活用するのもいいですよね。

上原 サーキュレーターもいいんですか。

伸幸 全然OKです。風を当てて刺激を与えることで、蒸散作用が活発になります。人間も血流が良くなると体が健康になるように、植物も蒸散させて循環させてあげることで、状態が良くなり、新芽が出てきます。植物が弱ったからといってすぐに水を足すのではなく、通気性のいい場所に置いてあげるなど、別の要因を探ってあげることも大切なんですよね。原産地の気候を調べて育て方を研究しながら、植物が過ごしやすい環境を探してあげてください。

僕たちも、世界を探せば沖縄でも育てられる植物がまだまだたくさんあるので、兄弟3人で力合わせて、まだ知られていない海外のワイルドな植物の魅力を発信していきたいと思います。

■Profile

照屋伸幸(W-PLANTS)長男。主に農園での栽培を担当。沖縄で育てやすい世界の植物を日々研究。好きな塊根植物はオペルクリカリアデカリー。

照屋昭(W-PLANTS)次男。のうれんプラザにあるショップ「W-PLANTS」の店長。パキポディウム・グラキリスが好きで自宅のベランダで種から育成中。

照屋清司(W-PLANTS)三男。食べられる植物が好きで特に果樹の知識が深い。今注目している果実はオージープランツのフィンガーライム。

山内浩一郎(メイクマン)メイクマン豊見城店の店長。植物コレクターといっても過言ではないほどに、自宅の庭では多種多様な品種の植物を育てている。

上原つぐみ(メイクマン)メイクマンで働くようになってから植物の魅力にはまり、自宅の庭ではロックガーデンを作り、サボテンやアガベなどを育てている。

■取材協力

W-PLANTS

https://wplants.theshop.jp/

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